特集 業界・企業研究でライバルに差をつける! “知る"を“チカラ"に 定番就活本完全ガイド By東洋経済

会社四季報

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東証一部上場——就活生ならこの言葉を目にしたことがあるでしょう。東京証券取引所の市場第一部に上場している企業を示すに過ぎませんが、なんとなく、立派な会社、大きい会社というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。『会社四季報』は東証一部以外も含めた上場企業すべてをカバーしている企業情報誌です。「上場企業だし、なんとなくよさそう」と思うのではなく、さまざまな角度から一歩進んだ企業研究をしてみましょう。

読み方を知れば怖くない約3500社の基本情報が一目瞭然

『会社四季報』は、日本の主な企業の事業内容や業績動向、財務内容などをコンパクトにまとめた企業情報誌で、名前のとおり、3カ月に1回発行される季刊誌です。100人以上の記者・編集者によって年4回発行しており、最新の決算業績や短期・長期の展望まで、各社の最新情報を掲載しています。掲載されているのは約3500社の全上場企業。「上場企業」とは、株式を一般の投資家でも売買できるようにしている企業のことです。株式を上場するためには、企業の中身を情報開示し、厳しい上場審査をクリアしなければなりません。
『会社四季報』は、どんな企業でも同じ基準で情報が収録されています。たくさんの会社を一定の基準で比較できることが、就活生の会社選びに役立つ理由です。
試しに中を開いてみましょう。2014年6月発売の『会社四季報』夏号から、「武田薬品工業」の掲載ページを用意しました。
まず社名左横の【特色】です。その会社の主要な事業、業界内での地位やシェア、系列/グループ会社、沿革などがコンパクトにまとめられているので、会社の大枠をつかむのに便利です。武田薬品の場合は、国内首位の製薬会社であること、米国とスイスの会社を買収して業容を拡大していることがわかります。【設立】では老舗企業なのか新興企業なのかがわかります。武田薬品は1925(大正14)年設立。来年90周年を迎えます。
社名の上の4ケタの数字は、上場企業1社ごとに割り振られた「証券コード」です。番号はおおむね業種別に割り当てられているので(近年は上場企業があふれ、番号不足で乱れている部分もあります)、前後のページで同業他社が探せます。たとえば4502武田薬品工業の近くには、4503アステラス製薬や4506大日本住友製薬などが並んでいます。
業種名自体はページの外側に記載されています。『会社四季報』では証券取引所の分類に沿って、掲載企業を33業種に分けています。武田薬品の属する【医薬品】にはいわゆる製薬会社のほか、バイオ・ヘルスケア関連や創薬ベンチャーも含まれています。

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限られたスペースに詰めた情報の裏側を読み解け

では、もう少し詳しく会社の姿を見ていきましょう。特色の左の【連結事業】(子会社のない場合は【単独事業】)には、各事業の売上構成比と営業利益率が示されています。主要事業はどれか、どの事業がもうかっているのかを把握しましょう。武田薬品の場合は、医療用(医師・病院向け)医薬品が売上の90%を占め、残りはヘルスケア4%、他6%となっています。ヘルスケアは「アリナミン」や「ベンザ」などの市販薬で、他は試薬・臨床検査薬、その他の添加剤などです。カッコの中がそれぞれの営業利益率で、大きいほど効率よく儲かっていることを示します。武田薬品でいうと、商売の規模は圧倒的に医療用医薬品が大きいですが、効率よく儲けているのは市販薬です。ちなみに▲はマイナスの利益率、つまり赤字(損をしている)ということを示しています。
なお、その左の【海外】は、売上高全体に占める海外ビジネス(現地子会社による売上)の比率で、どれだけグローバルにビジネスを展開しているかということがわかります。上場企業の中には海外比率が100%に近く、日本国内よりも海外で有名という会社もあります。どれだけ海外展開に力を入れているかがわかる箇所なので、海外勤務を希望する場合はよく確認しておきましょう。この欄は、海外子会社がない場合は【輸出】となり、売上高に占める輸出品の売上比率が記されています。
四季報を見るときに最も注目してほしいのが左下の業績欄で、細字が実績、太字が予想です。売上高とは、「企業が製品や商品、サービスなどをお客さんに販売・提供した結果、受け取った金額の合計」で、「年商」とほぼ同じ意味です。「14・3」とは「2014年3月期の業績」を示し、これを「決算期」と呼びます。14年3月期は13年4月〜14年3月末までの直近1年間を指します。決算期の前についている「連」「単」「◎」「◇」のマークは決算の種類で、順に、「連結」、「単独」「米国基準」「国際会計基準」の意味です。「連結」とはその会社だけでなく、子会社、孫会社といったグループ企業全体を示します。武田薬品は◇なので、国際会計基準(IFRS)を採用しています。米国基準や国際会計基準について現時点で深く知る必要はありませんが、海外展開が進んでいない会社でこれらを採用することはありません。グローバル企業を目指す人は目安にするとよいでしょう。
業績は、売上高が順調に伸びていることも大事ですが、営業利益が重要です。営業利益が実績から予想までコンスタントに増えていれば、順調に成長しているといえます。逆に赤字予想の場合は、採用数の減少が想定されるばかりか、これが続けば倒産の危機にもさらされます。この業績予想は年4回の発刊ごとに毎号更新されるので、必ず最新の状況を確認しておきましょう。
業績欄を確認したら、社名左のブロック、記事欄の前半部分を読んでみましょう。業績予想の根拠を簡潔に説明しています。一番重要なのが【】内のタイトルで、前期業績と比較した今期の状況(もしくは前号の予想と比較した内容)を一語で表しています。助詞の省略や独特の用語が多く、読みづらいかも知れませんが、プラスの内容なのか、マイナスの要素が多いのか、イメージをつかんでください。武田薬品の場合は「低水準」。一言で振るわないことがわかりますね。「底入れ」や「反転」とあれば、今期以降、業績の好転が見込めますし、「赤字拡大」ならば赤字続きで今後も浮上する材料がみえていないということになります。
記事欄の後半は「材料記事」といって、経営戦略、課題、新製品といった中長期の業績や経営に影響を与える情報が載っており、会社の最新の動向が把握できます。「債務超過」(負債が資産を上回り、信用力が大きく損なわれた状態)や、「継続疑義」(会社の存続が危ぶまれる状態)といったマイナス情報も積極的に掲載しているので、特に注意してください。

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おかずがぎっしりの“幕の内弁当"

業績欄の上、【株式】の下の【財務】欄では、会社の安全性や規模がわかります。注目したいのが「自己資本比率」です。「自己資本」とは、「資本金」(事業の元手)など主に株主が出資してくれたお金と、過去に積み上げてきた利益のことで、返済義務のない金額のことです。これを「総資産」(後述します)で割ったものが自己資本比率です。業種によって水準が違いますが、概ね5〜10%未満であれば、安全性に注意したほうがよいでしょう。
「総資産」自体も会社の規模を現す重要な指標です。会社が持っているお金や株式、債券などの有価証券、土地・建物や機械などすべての財産です。ただし、これらを銀行などから借金をして購入していた場合、その分も入ることに注意してください。総資産が大きくても、借金が大きければ利払いが会社の業績を圧迫する危険性もあります。手持ちの現金の流れを示す【キャッシュフロー】の状況もあわせて見れば、より安全性が担保できます。
【本社】欄の下には、従業員数のほか、平均年収、平均年齢も上場全社で掲載されています。『就職四季報』では非掲載などで調べられない会社もこの欄で確認できます。その右の【株主】欄では企業系列の状況がわかります。カタカナだらけの投資ファンドや「信託口」などの資金運用者に混じって、大株主上位に大手の会社が入っていれば、その会社の系列にあると考えられます。【役員】欄に同じ苗字の役員がずらっと並び、株主欄にも登場していれば、典型的なオーナー企業(創業者一族が経営を続けている同族企業)といえます。【株価】欄には過去の高値・安値が記載されています。現在の株価水準が歴史的にみてどのような位置にあるのかを見ておきましょう。【資本異動】欄はなじみにくいですが、優先株発行(債務の肩代わりであるケースが多い)や第三者割当増資(特定の人からの資金調達で資本金額を増やすこと)を年に何度も繰り返している場合は要注意です。
さらに、毎年3月に発売される春号は採用を特集し、業績欄の左上の小さい欄ながら、採用予定数や内定者数、初任給を上場全社にわたって調査・掲載しています。
限られたスペースにぎっしりと重要な情報が詰め込まれている『会社四季報』はよく、「幕の内弁当」に例えられます。志望する企業を1社1社調べてホームページの会社概要を探すよりもずっと効率的です。「四季報は読みこなすのにマニュアルが必要」とも言われますが、裏を返せば初心者が敬遠しているという意味。読み方を身につけて、ライバルに大きく差をつけてください。

会社四季報の誌面

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