スタディガイドマガジン「すたマガ!!」2008・秋号
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特集1:自分的将来設計
お茶屋「春田」舞妓・春衣さんインタビュー もう一度、夢を選べるとしても …うちはやっぱり、舞妓になりとおす
お茶屋「春田」舞妓・春衣さん
舞妓になりたい!縁がつないだ夢への道
 華やかな振袖にだらりの帯、日本髪に差した花かんざしを揺らし優雅に歩く──京の町を彩る舞妓は、国内外を問わず多くの人々の注目を集めます。その姿に憧れ、舞妓になりたいと15歳で花街※1・宮川町に飛び込んだ少女がいました。
 「テレビのCMで舞妓さんを見てからずうっと、なりたいなと思うとったんどす」
 おっとりと微笑みつつ話す春衣さんは、日本画から抜け出してきたような、はんなりと愛らしい雰囲気。舞妓になることを夢みていた少女は、今や多くのお座敷に引っ張りだこの売れっ子に成長しました。
 憧れを抱いていたとはいえ、普通の中学生にとって舞妓になるのは遠い夢。一度は他の道を模索した春衣さんですが、どうしても諦めきれず中学校の担任教師に相談しました。「そうしたら、『絶対に無理や』て言わはったんどす」。当時を思い出したのか、春衣さんがおかしそうに笑います。
 無理だと言った先生は、過去に「舞妓になりたい」と希望した生徒を担当したことがあったそうです。それだけに花街の華やかさを支える様々なしきたり、そして稽古の厳しさも知っていたのです。生半可な覚悟では続かないと、春衣さんにそれとなく伝えるための言葉だったのでしょう。しかし春衣さんの熱意に負け、話を進めてくれたそうです。
 映画や小説などフィクションではお馴染みの舞妓ですが、仕事内容を具体的に知る人は少ないはず。花街のしきたりは? 舞妓は何歳までできる? お給料は? など、疑問はつきません。春衣さんが舞妓になるまでを追いながら、それらの疑問について尋ねることにしました。
舞妓の仕事とは?
 京都には上七軒・祇園甲部・祇園東・先斗町・宮川町と五つの花街があり、「五花街」と呼ばれています。京の舞妓は、この五花街のどれかに所属しなければなりません。それぞれ歴史や特徴がありますが、春衣さんが所属する宮川町は特に若い舞妓が多く、活気あふれる花街として知られています。
 舞妓は芸妓の見習い段階とされますが、舞妓になるためにはまず「お茶屋※2」もしくは「置屋※3」で奉公しなければなりません。そこに半年〜1年にわたって住み込み、舞妓に必要な歌、舞、三味線などの芸事やしきたりを学びます。この期間は「仕込み」と呼ばれていますが、あまりの厳しさにここでドロップアウトしてしまう人も多いのだとか。仕込みの期間を終えると「見習い」期間があり、その後「見世だし」と呼ばれるお披露目を行います。見世だしを終えて、はじめて舞妓と認められます。舞妓になると、お座敷で歌や舞などでお客様をもてなします。
 宮川町では仕込み期間が10か月と決められています。仕込みを終え見世だしの日取りが決まると、仕込みの間に学んだ課題曲のうち2曲をお茶屋・芸妓役員の前で披露する試験が行われます。これにパスしなければ舞妓にはなれません。
 試験に合格したら舞妓として活躍できますが、その期間はだいたい15〜20歳くらいまで。基本的に給与はありませんが、宮川町ではお座敷で出るご祝儀を舞妓が受け取ることができるそうです。20歳を過ぎる頃には「衿かえ※4」を行い、一人前の芸妓となります。
華やかさと厳しさと──お座敷の舞台裏
 華やかな一方で、担任の先生が心配したほど厳しい花街の世界。春衣さんはこれまでに、舞妓をやめようと思ったことはなかったのでしょうか?
 「それはあります(笑)。でもやめたいなあと思った次の日に、すごく楽しいお座敷があったりして、世間はなかなか上手いこといくのやなあと思います」
 仕込み期間では、最終の10か月目が辛かったといいます。試験に落ちたらどうしようという不安、見世だし直前で厳しくなる周囲からの視線など、プレッシャーが増していきます。それだけに、試験に合格し晴れて舞妓になった嬉しさはひとしおです。
 舞妓になって最も驚いたのは、礼儀作法などの所作について非常に細かい点まで学ぶこと。「お座布団の向きはもちろん、マッチ箱も上座に向けるのやとか、おぶう(お茶)はどの方からお出しするのが正しいかとか、上座の後ろを通ったらあかんとか……。中学校では習わへんような、そういうきめ細かさを教えてもらいました」。多くの作法を覚えた現在でも、「緊張したら、わああぁ……と慌ててしまうんどす」と、春衣さんははにかんだように微笑みます。
 外国からのお客様が多い京都では、英会話を学ぶ機会も設けられています。外国語と同時に、京言葉も勉強しなければならないことの一つ。生粋の京都人である春衣さんはさほど苦労せずマスターしましたが、花街独特の言い回しは意識して学んだそうです。春衣さんが所属しているお茶屋「春田」の女将・春田宝子さんによれば、「地方から出てきた子は、まず標準語に直してから京都弁を勉強しますねん」とのこと。うっとりするほど耳に心地よい京言葉ですが、それを使いこなす裏には舞妓さんたちの人知れない苦労があるのです。
京都のしきたりを知る
舞妓さん 次は京都ならではのしきたりについて。知っている人も多いかもしれませんが、お茶屋や置屋の女将は「お母さん」、先輩の舞妓や芸妓は「お姉さん」と呼ばれます。つまり、春田さんは春衣さんにとって「お母さん」になるわけです。
 この世界ではお姉さんのいうことは絶対です。たとえ確実にお姉さんが間違っている場合でも、後輩はそれを受け入れなければなりません。「極端な話、お姉さんが『カラスは白い』と言わはったら、白いんどすねん」と春田さんが説明してくれます。しかし、もしお姉さんが教えた内容が間違っており、春衣さんが他の人に叱られた場合はどうなるのでしょう?
 「その場合は、教えてくれはったお姉さんが『すみません、うちが教えたんどす』と謝りに行ってくれはります」と春衣さん。人に教えるからには、責任もきちんと取るということでしょう。
 仕込みから正式に舞妓になるときに、お姉さんと結納を交わすというしきたりもあります。一般的な結納と同じように仲人や世話人をたてるという、非常に本格的な儀式です。結納を交わすと、お姉さんは日常のあらゆる面で舞妓の面倒をみる、いわば後見人のような役割を果たすわけです。
 春衣さんいわく、「緊張しました。ほんまにもう後戻りはできませんという感じやから、覚悟が必要どすねえ」とのこと。結納を交わすと、どちらかが花街を去るか他界するまで、結んだ縁は続きます。まさに実の姉妹のように、深いつながりが生まれることになります。
他とは比べられない魅力、充実感が花街にはある
 舞妓として活躍できる15〜20歳といえば、友人や恋人と遊びたいお年頃です。ちょっと気になるプライベートについて聞いてみました。
 驚いたのは、プライベートの時間そのものが少なく、友人と遊ぶことなど一切できないに等しいということです。うらやましいと思うことも多いのでは?と尋ねると、「あんまり思いません」という答が返ってきました。
 「うちらはいろいろな所に連れて行ってもろたり、なかなか経験できへんようなこともさせてもろてますし……。他の人と比べていいとか悪いとかではなしに、楽しみ方もいろいろあると思います」
 女の子にとっては一番の関心事だろう恋愛については、残念ながら「花街は恋愛禁止」だそうです。春田さんは「お稽古や芸事がおろそかになりがちですし、なにより奉公している間は、親御さんからお預かりした大事な娘さんどすから」と、きっぱりと答えました。
他とは比べられない魅力、充実感が花街にはある
お茶屋「春田」舞妓・春衣さん 同世代ということで、大学生のイメージについて春衣さんにお話をお願いしたところ、「うちは中学校までしかお勉強してませんけど、大学生の方は高校も大学も行ってずっとお勉強されますやろ。すごいなあと思います」とニッコリ。なかでもサークルについては「お友だちからのお手紙で、すごい楽しいて聞いてますから、いっぺん見てみたいなあと思います」と興味津々といった様子。
 そんな春衣さんに、「もし中学生に戻って将来を自由に選べるとしたら、舞妓と大学生のどちらを選びますか?」と質問をぶつけてみました。考え込むことなく「やっぱり舞妓どすね」と答える春衣さん。さり気ないけれど迷いのない答に、選んだ道への信念が感じられます。自分の進路に対する軸がぶれていない春衣さんですが、その信念はどこからくるのでしょうか。
 「ここではきっちりした答が返ってくるんどすね。例えばうちが『これはどうなんやろ』と思ったことをお母さんに聞くと一番いい答が返ってきたり、他の目上の方に相談させてもろても、絶対にいい答をいただけるんどす。そういうところがいいと思います」
 若いながらも、厳しい世界でプロフェッショナルとして生きる春衣さんは「好きなことをやりはるのが、一番ええと思うんどす」と、大学生にエールを贈ってくれました。
 「自分がやりたいこと、正しいと思うことを大学生の間に見つけはって、悔いの残らないところへ進んでいただいたら、うちも嬉しおす」

─注記─
※1  花街 芸妓のいる町をさす。
※2  お茶屋 舞妓・芸妓を手配してお酒や料理などを提供する役割を担う。
※3  置屋 舞妓の志願者に芸事やしきたりを教える役割を担う。衣食住すべての金銭的負担を負う慣わしとなっている。
※4  衿かえ 舞妓から一人前の芸妓になること。舞妓が使う赤い衿から、芸妓が使う白い衿へと変えることからきている。
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